夏に怖い話を聞きたい理由と湿気とジェットコースター

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(撮影:Ricoh GR)


じめっとした空気。演奏家にとって夏の雨は本当に不快である。それは肉体的な疲労もさることながら、楽器の調子が極端に落ちるからだ。音程、発音、西洋に比べ湿度の高い日本の夏は、楽器にとってもやっかいな季節である。



今年の夏は梅雨に雨が降らず、梅雨明けのとたんに雨が降るようになった。演奏会が終わったあと、上手く弾けるようになった!みたいな間抜けな天気。こんな時期にホラー映画が見たくなるのはなぜだろう。僕は高校生の夏、何かに取り憑かれたように、映画を見ていた。



ホラー映画、怪談、肝試し。日本を代表する夏の風物詩である。そもそも夏の怪談の起源は江戸時代の「夏狂言」に遡るそうだ。休暇中の人気役者に代わり、売れない役者や若手が、低価格で舞台を行う際、怖い芝居をするようになったという。当時冷房もなく蒸し暑い小屋の中では、「涼み芝居」と称してあの「四谷怪談」などが上演された。


日本と西洋でホラー映画の様子は大きく違う。よく言われるのは動的な西洋ホラーと、静的な日本ホラー。


邦ホラー。私感だが洋ホラーに比べて、びっくりする仕組みが少ない・・・ということはない。リングや呪怨の音響効果は絶妙で、見せ場では衝撃的な音響を用いている。つまり「わっ」とさせる仕組みはきちんとある。ではなぜ「静かに怖い」のか。



答えは「湿度」だと思う。


西洋の怖い話はハロウィンに代表されるように秋ごろからである。洋ホラーを思い浮かべると秋や冬の寒い景色が浮かぶ人が多いのではないか。エクソシストやシックスセンス(ホラーかな?)は冬を舞台にしている。寒さはあれど、そこに蒸すような湿度はない。


対して邦ホラー「四谷怪談」「リング」「呪怨」「仄暗い水の底から」、水が登場し、画面は暗く、かび臭さが鼻につく、まさに日本の陰鬱な雰囲気を漂わせた作品たち。映像の中は夏や梅雨の時期で「じっとり-不快な湿度」を感じる。これ踏まえると、日本人が夏に怖い話を好むのは「涼むため」と思えない。じっとりとした夏だからこそ共感する、怪談ではないか。日本人だからこそ、より感じられる感覚である。


さて、なぜわざわざ人は不快な思いをわざわざ求めるのだろうか。


僕はジェットコースターが嫌いだ。「なんでホラー映画をみたいの?」と怪訝そうに言う女の子は大抵ジェットコースターが好きだ。体験が動的なものか、静的なものか、そういう区別は置いておく。


人が怖い思いをしたがるのは、「安全な場所から臨死体験ができることで強い刺激を得ることができるから」という話を聞いたことがある。


ここでホラー嫌いの人を思い返すと、彼らは僕よりも霊を信じている。僕は現実にテレビから貞子が飛びでてくることなんて信じていないし、金縛りにすらあったことないから、霊を現実的に考えていない。


霊が見えるという友達がいる。嘘をつく子ではないので本当に何か見えるんだろう。でも僕は霊感が全くないから、悪霊による被害がない。僕の場合きっと何かうまくいかなくても、それは霊のせいではなくて、大抵はお腹を壊してるせいだろう。激辛ラーメンを食べてる最中にお腹が壊れる僕のことだ、霊は唐辛子に勝てない。だから僕は「ありえない話」としてホラー映画を見ることができる。

ジェットコースターは違う。小さいころジェットコースターに乗ろうとしたら「身長が足りません」と断られたことがあるけど、あれは悲しかった。身長が小さくて悲しかったランキング第2位だ。ちなみに第1位は「自分より背が低い男子は無理」っていう女子の雑談が聞こえた時である。それから彼女たちを超えることはなかった。(背が伸びなかった)


脱線したが、つまり身長が足りないということは、事故のリスクがあるからで、考えられる事故は一つである。ベルトが外れて、真っ逆さま。ホラーよりよっぽど怖いじゃないか。祟られてお腹を壊す方がマシだ。だからジェットコースターを乗る人はすごいと思う。落ちるかもしれないんだぞ。



毎年売り出し中の役者が、「本当にあった」らしい怖いドラマで嘘くさい悲鳴を上げて、演技している。僕はその嘘くささが好きで、毎年放送を楽しみにしている。ちなみに僕が本当に驚いた時は「きゃー」ではなく「ぅお゛」という声が出る。

夏といえば怪談。特に今年の不快な夏は、怪談を楽しむのにピッタリのような気がする。





▶︎五十嵐紅-クラシックギター
東京音楽大学クラシックギター科卒業。第27回スペイン音楽ギターコンクール第2位、第29回ジュニアギターコンクール高校生の部1位、クラシカルギターコンクール、GLCギターコンクールなど様々なコンクールで入賞。東京音楽大学定期演奏会ソロ部門に出演。2013年日本ギター連盟主催「新進ギタリストの競演」など多くのコンサートに出演。クラシックギターを伊東福雄、江間常夫、荘村清志各氏に師事。スペイン歌曲伴奏法を服部洋一氏に師事。原宿での定期演奏会「水曜日のクラシック」主宰。50gt(five-o-gt)代表。HP:www.koh-guitar.com




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水曜日のクラシックin原宿
フルートとギター
9/13(水) 19:00-20:00(18:30open)

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